ジャーナリスト伊藤詩織さん「2018年シエラレオネ現地取材報告」をきいて。レイプ・女性器切除・乳児死亡…シエラレオネの女性たちは今。

ジャーナリスト伊藤詩織さんの2018年シエラレオネ現地取材報告をきいて。

2018年6月20日に、ジャーナリストの伊藤詩織(いとうしおり)さんによる、シエラレオネでの取材報告のラジオ番組(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)が放送されました。

実は、2018年5月に、シエラレオネの首都フリータウンにて、たまたま一緒に会食させていただいた下里。ラジオをお聞きし、その活動に大変感銘を受けました。



感銘とういより…ほとんど都市の生活支援しかしてこなかった私としては、2018年現在の村の人々の生活の現状(リアル)に心底ショックを受けました。彼女が取材したテーマは、女児の性教育や、女性器切除(FGM)※成人割礼の伝統儀式でクリトリス等の切除、乳幼児死亡事例の実態などですが、2018年の今、起こっていることとは、とても信じられない実態がそこにはありました。

レイプ・女性器切除・乳児死亡…シエラレオネの女性たちは今。

今、2018年です。

シエラレオネの内戦が終わってからもう15年経つというのに、信じられないようなことが、まだ政府や国際支援の手の届かない農村部では起こっています。特に彼女が焦点を当てたのが、「女性・医療・教育」という分野。ご自身も性被害の苦しい経験をもたれる彼女が紡ぐ言葉は、よりリアリティがあって、心臓をえぐられるような言葉ばかりでした。

ラジオをお聞きになっていない方がほとんどだと思うので、今回は、私のブログにて大変恐縮ながら、その取材の一部始終をまとめたうえで、私のブログの読者の皆様にも、シエラレオネの「今」について、紹介させていただきたいと思います。

伊藤詩織さんとは?

伊藤詩織さんは、1998年生まれの現在29歳です。ロンドンを拠点にフリーランスのジャーナリストとして活躍。海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを制作されています。国際的なメディアコンクール、ニューヨークフェスティバル2018では、ご自身が制作に携わった日本の孤独死を巡るドキュメンタリー『LONELY DEATHS』が金賞を受賞しました。著書に、2017年に文藝春秋より出版された『ブラックボックス』が話題となりました。

実際にお会いしてみた感想。マジでめちゃくちゃ美人さんです!


Black Box

シエラレオネ取材のきっかけ

「シエラレオネにずっと行ってみたかった」という伊藤詩織さん。

シエラレオネと言ったら、2014年にアウトブレイクしたエボラ出血熱が有名ですね。

当時、流行が確認された農村部では、約2年の間学校が閉鎖され、学校へ行けなくなった女児たちが、コミュニティの中でレイプされるなどの性暴力が行われてしまったり、合意のもとであっても10代の妊娠がありました。

学校が再びオープンになった当時、政府が妊娠している子どもは学校には戻れないという禁止令をつくりました。伊藤詩織さんは、学校へ行けなくなってしまった女児のリアルについて、まず最初に興味が沸いたそうです。

当ブログでは、彼女が行った3名の女性へのインタビューの一部始終をかいつまんで紹介させていただきます。

レイプクライシスセンターを訪れて。シエラレオネに蔓延る、性暴力のリアル

ラジオ番組では、伊藤詩織さんがフリータウンにあるレイプクライシスセンターに訪れたエピソードから、インタビュー紹介がはじまります。

レイプクライシスセンターとは、性暴力のサバイバーが全国から集まる施設のことで、施設にいる85%から90%のレイプサバイバーが18歳以下の子どもだそうです。そいういうこともあって、センターでは学校にフォーカスをあて、農村部への出張授業などを通して、子どもたちに性暴力のリアルを教える活動を主に行っています。

ここでは、伊藤詩織さんによる一人のシエラレオネ人女性へのインタビューが印象的でした。

シエラレオネの農村部に住み、14歳の時近所の男性(当時20歳くらい)に性暴力(レイプ)を受けたというその女性は、そのまま妊娠してしまい、レイプクライシスセンターへ来ることになったそうです。

彼女がインタビューに答えた一部始終を下記に抜擢しました

「加害者に初めて会った時求婚されたました。私は無視しましたが、殺すぞと強制的に性行為をされました。妊娠していることにも気が付きませんでした。着替えていたとき、妹が妊娠線をみつけて、妊娠が発覚しました。そして、おばさんに何があったのか話し、レイプの事実が明らかになりました。誰が加害者なのかということになり、おばさんがその加害者の男に聞きにいったところ、男は事実を認めました。ですが、加害者の家族は差別的なことや攻撃的なことを言うなどひどい態度だったので、警察を呼びました。私は14歳で、彼はわかりませんが20代だったと思います。私はその性行為が赤ちゃんを作る行為だと気づきませんでした。さらにおばさんはその人と結婚しなさいと言いました。」

さらに女性は続けます。

「私が一番ショックなのは、自分が教育を受ける機会、勉強する機会が失われたことです。」

 

子どもに対する人権意識にまだまだ課題の残るシエラレオネ。今回のケースでは、性行為が結果として何をもたらすかを知らなかったという彼女から、さらに教育機会を奪う結果になりました。

「学校に行けなくなったことが一番ショックだった。」と話す彼女。

政府は、妊娠しても学校に行けるということになると、10代半ばで妊娠してもいいという逆のメッセージに繋がるため、妊娠している子どもは学校へはいけないという禁止令を作りました。

伊藤詩織さんは、「日本でも妊娠で退学や停学処分されるということがあるけれど、シエラレオネではエボラがあって学校にいけなくなる子どもたちがいて、その最中にレイプがあって、妊娠した人は学校にいけなくなるということが起きていた。そういった人にこそ教育が必要。」

とラジオ番組で答えています。

さらに性暴力被害のケースでは男性教諭が生徒にセックスを強要して、進級させたり単位をあげたりということも起こっていると言います。子どもの権利が抑圧されてしまう実態は、未だにかなり深刻なものであるということを実感したお話しでした。

 

FGM=女性器切除(クリトリス切除)はまだ根深く残っている。母親から伝統を押し付けられた女性のインタビュー

幼い頃に女性器切除を受けた女性のインタビューにとてもショックを受けました。

成人の儀式として、クリトリスを切除したり、女性器の入り口を縫ったりするなんて…日本人の皆さんは想像できるでしょうか?

FGMは今、国際社会の中でかなりシビアな問題で、私も大学生の時、国材協力ゼミで研究テーマにしている同級生もいました。シエラレオネにも根深く残る、伝統的な文化の一つです。

幼い頃、母親から強制的にFGMを受けたという女性は、「母は伝統的な人でFGMをしなければ成人できないと信じている人なので、自分の気持ちを伝え、考え方を変えてもらうことは不可能だった」と言います。

妹がいましたが、再婚した父親の影響で、妹はFGMを免れることができたそうです。

「私は何の選択肢もなくFGMをされたのに、妹には選択肢があって、その悔しさから家に引きこもることがあります。」

と、悔しさをインタビューにぶつけます。

19歳までに10人中9人がFGMを強制されるシエラレオネ共和国。彼女がFGMを施されたのはなんとわずか5歳の時でした。

母親に強制的に聖なる森に連れていかれ、切られたあとは2週間から3か月そこにいなければならなりません。切断手術は、ソベイズと呼ばれる、村で村長から任命された年配の女性によって、なんの医療知識もないままに、麻酔なしで施されます。

母になること、よき妻になること、女性はどうするべきかをそこで教えられます。彼らにとってFGMは、コミュニティ社会の中で形成された極めて重要な伝統文化なのです。

女性が快楽を得ないよう、また男性による女性への支配的な意味など、女性器切除の理由はさまざまです。

村の人々はFGMを行うために、年収に近い200$~300$というお金を積み立て、ノートやペンも買うお金もないけれど、これだけは女性となるために必要とされると信じています。ゆえに、彼女は一度も学校へ通ったことがありません。医療にアクセスしたら助かる命も、FGMの切除のために使われてしまうお金のために助からないケースもあると、最後に伊藤詩織さん。

FGM根絶運動や、切断を安全に行うための訓練など、国際的な支援や運動は徐々に活発になってきています。合意がないとFGMを施してはならないという法律もできました。

インタビューに答えた別のシエラレオネ人女性が、「法律だけができてもその内側でコミュニティや思想に弾圧されてしまう人を、サポートしていくことが重要」と答えたのが印象的でした。

今もなお続く農村部の悲劇。7人の子どもを失った女性の最後の行動とは?

「世界で一番平均寿命の短い国」と言わるシエラレオネ共和国。死産率、幼児死亡率が高く、マラリアや下痢も原因の一つ。

農村部ではいまだに病院の存在を知らない女性たちの間で、ハーブで治す伝統医療が信じられています。エボラ出血熱の大規模感染の時も、なかなか国際支援の援助を受け入れられず、「宇宙服を着た人達に、臓器を売られてしまう」と信じて疑わなかった人々も。

2018年の今、7人の子どもを失った女性のインタビューが印象的でした。

 



女性は、現在8人目と9人目の子どもがいるそうですが、7人の子どもをすべて5歳以下で亡くしました。なぜ亡くなってしまうのか理由がわからず、お金がなくて病院へ行けないものと思っていたが(シエラレオネでは6歳までの子どもは無料で医療を受けられる)今回はじめて病院へ行くことを決心し、そこで伊藤詩織さんと出会うことになります。

それまで何度もハーブで治療を試みたというその女性は、近所中に「あなたには悪魔が憑いているから諦めなさい」と言われ、旦那さんにも逃げられてしまったそう。それをみかねた近所の理解ある人が「病院に行きなさい」と初めて教えてくれました。

ICU(集中治療室)で現在治療を受けることができている3歳の息子さん。蚊帳を買うお金もなく、毎日充分な栄養を子どもに与えることもできない。そんな彼女は、息子が元気になったら「彼を手放したい」と言います。

自分と一緒に住んでいたらまた死なせてしまうかもしれない。

これ以上目の前で子どもを失うことが耐えられない。

 

だから子どもを手放したい。

 

と言ったのだそうです。

 

子どもを産んだことはありませんが、日本にいたらどうやったってこの心境地には達することはないと思います。

 

これ以上の手遅れを生み出さないために、私たちにできることは、「伝える」ことしかないのかもしれない。そんな風に思った現地活動報告でした。

 

ラジオ内のすべての音声はこちらで配信しています↓

「伊藤詩織さんのインタビューから考える〜性暴力被害と司法やメディアの問題とは」
▼2017年6月7日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)
https://www.tbsradio.jp/153884

 

 

今回シエラレオネに行かれたのは、新たな作品作りのためのプレ取材のためだったそうです。彼女の活躍に期待するとともに、今後もますます応援させていただきたいと強く思いました。

 

またシエラレオネでお会いしたいなぁ~

 

下里夢美

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下里 夢美
下里夢美(27歳)月間12万PV「下里夢美オフィシャルブログ」を執筆。NPO法人アラジ代表理事。「世界で一番命の短い国」シエラレオネで3つの貧困削減プロジェクトと日本人ゲストハウス「CHAMELEON」の運営に取り組む。現地法人Africa Lion.Ltd 代表取締役。「日本最大のアフリカに挑戦する女性のためのコミュニティ・アフリカ女子部」部長。2014年3月より活動をはじめ、2017年7月にNPO法人化。※インタビュー・講演のご依頼は「shimosato@alazi.org」にて!現在第1子となる息子君を妊娠中。2019年3月出産予定。
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下里夢美(27歳)月間12万PV「下里夢美オフィシャルブログ」を執筆。NPO法人アラジ代表理事。「世界で一番命の短い国」シエラレオネで3つの貧困削減プロジェクトと日本人ゲストハウス「CHAMELEON」の運営に取り組む。現地法人Africa Lion.Ltd 代表取締役。「日本最大のアフリカに挑戦する女性のためのコミュニティ・アフリカ女子部」部長。2014年3月より活動をはじめ、2017年7月にNPO法人化。※インタビュー・講演のご依頼は「shimosato@alazi.org」にて!現在第1子となる息子君を妊娠中。2019年3月出産予定。