なぜダイヤモンドは紛争の資金源になったのか?シエラレオネのブラッド・ダイヤモンドの歴史に迫る。

なぜダイヤモンドは紛争の資金源になったのか?シエラレオネのブラッド・ダイヤモンドの歴史に迫る。

1991年~2003年まで、西アフリカのシエラレオネで勃発した「ダイヤモンド紛争」。良質なダイヤモンドの産地として知られるこの国では、政府軍と革命統一戦線(RUF)との間で10年以上も内戦が繰り広げられ、多くの市民が犠牲になりました。

2016年より「NPO法人アラジ」としてシエラレオネの貧困削減支援に関わる代表理事の下里より、今回のブログでは、「なぜシエラレオネにおいて、ダイヤモンドが紛争の資金源になったのか?」について詳しく述べていきたいと思います。

目次

  1. ダイヤモンドはなぜ高価なの?
  2. シエラレオネのダイヤモンド紛争とは?
  3. なぜダイヤモンドが紛争の資金源になるの?
  4. 紛争ダイヤモンド根絶のためのキンバリー・プロセスとは?
  5. キンバリー・プロセスはダイヤモンド原産国を本当に守っているのか?現在のシエラレオネ

1.ダイヤモンドはなぜ高価なの?

ダイヤモンドは宝石の中でも「世界一の硬度」と言われています。希少性もさることながら、薬品や光線に強いので、手入れをすれば輝きが失われることがありません。人々が長年愛用するという意味では、「愛し合う2人の永遠の愛を誓う」にふさわしい、もってこいの宝石と言えます。また、ダイヤモンドの石言葉には、「純潔・永遠の絆・純粋無垢」という意味もあります。



ダイヤモンドが憧れの存在として日本に定着したのは戦後、高度経済成長期の1960年代からと言われています。これまで制限されていたダイヤモンドの輸入が1961年に解禁。高度経済成長によって人々の生活も豊かになったため、婚約する際に男性から女性に「愛の誓い」として、ダイヤモンドの婚約指輪を贈る習慣が定着していったと言われています。「給料の3か月分でダイヤモンドの指輪を買う」なんてセリフを、聞いたことがあるかもしれません。

2.シエラレオネのダイヤモンド紛争とは?

そんな、愛し合う2人の永遠を象徴するダイヤモンド。しかしその輝きとは一転、ダイヤモンドには、表舞台では語られることのなかった血塗られた歴史がありました。

「ダイヤモンド紛争」をご存知でしょうか?西アフリカに位置するシエラレオネ共和国。2018年現在でも「世界で一番命の短い国」、「世界一貧しい国」と揶揄される、世界最貧国の一つです。

同国では1991年~2003年まで、政府軍と反政府軍(革命統一戦線RUF)の間で内戦が繰り広げられ、約7万5,000人の市民が犠牲になりました。政府と反政府軍は10年以上にも渡りダイヤモンド鉱山の利権を巡って争い、その当時シエラレオネから各国へ密輸されたダイヤモンドの原石は、紛争の資金源として利用されていました。のちにいう「ブラッド・ダイヤモンド(血塗られたダイヤモンド)」です。

隣国リベリアのRUFへの支援や、複雑な内政状況によって、2003年に終結するこのダイヤモンド紛争。内戦の際には、「政府に投票させないようにするため」と銘打って、RUFによる市民への四肢切断が行われました。

また多くの子どもが誘拐され、のちに麻薬を用いて少年兵として勢力に組み込まれ、世界最大規模の1万人の子ども兵を出しました。

ダイヤモンドを巡る内戦は、ただでさえ脆弱だった国内経済を壊滅状態とし、終結後も大きな爪痕を残しています。

当時原石として密輸された「紛争ダイヤモンド」は、ヨーロッパへ運ばれ、その地で加工された“ヨーロッパ産”として、世界中の先進国民が求める、「二人の愛の象徴」へと変わりました。

3.なぜダイヤモンドが紛争の資金源になるの?

さて、当ブログで紹介している紛争ダイヤモンドは、「ブラッド・ダイヤモンド」「コンフリクト・ダイヤモンド」などと呼ばれ、1960年代~2000年代初頭まで、アフリカ諸国で起こった多くの内戦を長引かせ、数々の紛争の資金源となりました。

厳密に言えば、紛争ダイヤモンドとして当時密輸されていたダイヤモンドは、ほとんどが研磨されていない「原石」でした。ダイヤモンドの原石はその持ち運びの用意さから、具体的には以下の理由で、密輸するにはもってこいの白物だったことが伺えます。

  • 軽くて小さい割に経済的価値がある
  • 腐らない、劣化せず丈夫である
  • 金属探知機に反応しない
  • 見ただけでは生産地の特定が困難

このように、ダイヤモンドの原石には、密輸する側にとっては密輸を用意にしてしまうメリットがたくさんあるのです。

映画『ブラッド・ダイヤモンド』でも、入れ歯に隠して出国したり、羊飼いのフリをして羊の背中にダイヤモンドを埋め込んで密輸しようとしたりする者たちの様子が描かれ、アフリカ諸国における国境付近の甘い警備体制も原因の一つだということが伺えます。

4.紛争ダイヤモンド根絶のためのキンバリー・プロセスとは?

密輸・武器取引、長引く紛争の問題を重くみたダイヤモンド業界は、自らこれらの取引を排除することを決意します。2003年に南アフリカで採択された「キンバリー・プロセス」です。

キンバリー・プロセス認証制度(KPCS)は、加盟国を経由するすべてのダイヤモンドの原石が”紛争に関わらない”ことを証明する国際認証制度です。紛争とは関係ないと証明されたダイヤモンドの原石には、原産地証明書(キンバリープロセス証明書)が付与されるようになりました。

また、違反した国には除名処分等の罰則を科しています。例えばコンゴ民主共和国は、2004年にダイヤモンド輸出量がゼロであるという虚偽の報告を行った際に、除名処分を受けています。またベネズエラも2005年に一時資格停止の処分を受けています。

功を奏し、2000年には4%もあったといわれる紛争ダイヤモンドは減り続け、現在では世界のダイヤモンドの99%以上が紛争ダイヤモンドではないと言われています。シエラレオネ共和国でも採択の2003年に紛争は沈下しています。

5.キンバリー・プロセスはダイヤモンド原産国を本当に守っているのか?現在のシエラレオネ

この写真は、私(下里夢美)が2016年に撮影した写真です。広大な土地に空いた大きな穴。穴の底からは水が湧き出て、その中を這うように現地の村人が、ザルをもち中腰になりながらダイヤモンドを一生懸命探しています。

パラソルの下にいるのは、この土地の地主です。一日中、水につかって働く手彫り労働者が見つかったダイヤモンドを横取りしないように、上から見下ろしているのです。彼ら労働者の賃金は一日1$以下。病気になっても病院に行くことはおろか、ダイヤモンドが見つかっても、彼らの取り分は限りなく0に近いでしょう。

また、穴が開いた土地は元の形に戻されることはなく、大規模な森林破壊につながっています。

現在は、一部機械化し、良質なダイヤモンドの産出量が増え続けているシエラレオネ。でも、私がみた現実はフェアトレード・ダイヤモンドとは程遠いものでした。

特定非営利活動法人ダイヤモンド・フォー・ピース(DFP)の調査によると、「キンバリー・プロセス」にも落とし穴があることがわかりました。DFPの活動報告、「キンバリー・プロセス認証制度の課題」では、キンバリー・プロセスには多くの課題がいまだ残されていることを指摘しています。

記事内では、ダイヤモンドに取巻く諸問題は、児童労働・強制労働・密輸・環境破壊・サプライチェーンの複雑な課題など様々であるのに、キンバリー・プロセスは紛争の資金源以外の問題には一切関与していないことや、紛争ダイヤモンドの定義において、

「紛争ダイヤモンドは、正当な政府を転覆させることを目的とする反政府軍による紛争の資金源として用いられるダイヤモンド原石を意味する」(DFP訳)

の記述のように、政府軍が人権抑圧や紛争に用いる、研磨されたダイヤモンドであればキンバリー・プロセスの違反には当てはまらないなどの解釈が一部問題になっています。



キンバリー・プロセス認証制度は、紛争ダイヤモンドを抑制する一定の成果を挙げつつも、まだまだ多くの課題を抱えています。

ダイヤモンド業界は多くの国・企業・団体が様々な思惑を持ち動いていることが伺えました。大多数の人々が合意する解決策に至るのはまだまだ先の未来かもしれません。

 

下里夢美

シエラレオネの歩き方

ここでしか手にはいらない
シエラレオネの行き方・歩き方を
アラジの下里夢美が
まとめて発信しています!

下里夢美ライン@

毎週日曜日に定期配信◎
お友達登録はコチラから☟

images

 

下里 夢美
下里夢美(27歳)月間12万PV「下里夢美オフィシャルブログ」を執筆。NPO法人アラジ代表理事。「世界で一番命の短い国」シエラレオネで3つの貧困削減プロジェクトと日本人ゲストハウス「CHAMELEON」の運営に取り組む。現地法人Africa Lion.Ltd 代表取締役。「日本最大のアフリカに挑戦する女性のためのコミュニティ・アフリカ女子部」部長。2014年3月より活動をはじめ、2017年7月にNPO法人化。※インタビュー・講演のご依頼は「shimosato@alazi.org」にて!現在第1子となる息子君を妊娠中。2019年3月出産予定。
yumemi

下里夢美(27歳)月間12万PV「下里夢美オフィシャルブログ」を執筆。NPO法人アラジ代表理事。「世界で一番命の短い国」シエラレオネで3つの貧困削減プロジェクトと日本人ゲストハウス「CHAMELEON」の運営に取り組む。現地法人Africa Lion.Ltd 代表取締役。「日本最大のアフリカに挑戦する女性のためのコミュニティ・アフリカ女子部」部長。2014年3月より活動をはじめ、2017年7月にNPO法人化。※インタビュー・講演のご依頼は「shimosato@alazi.org」にて!現在第1子となる息子君を妊娠中。2019年3月出産予定。