農村部の少数民族への教育支援は押し付けか?問題ー全ての人が初等教育を受けるべき理由3つ【下里夢美の開発協力アウトプット】

農村部の少数民族への教育支援は押し付けか?問題ー全ての人が初等教育を受けるべき理由3つ【下里夢美の開発協力アウトプット】

前回なかなか反響があったこちらの記事:貧しい国にモノを送るのは良いか悪いか?問題―私たちが物品寄付をお断りする4つの理由【下里夢美の開発協力アウトプット】

ですが、今回は、「農村部の少数民族への教育支援は押し付けか?問題」をテーマに自論をつらつら書いていきたいと思います。

「農村部で文化的な暮らしをしている人々に、先進国民が教育を促すのは、援助の押し付けではないか?」

という声をたまに耳にします。

確かに…

教育がなくても地域のコミュニティで助け合って子育てし・畑を耕し、狩りをする。

そんな暮らしをしている森の中の人々には、教育は必要ないかもしれません。

教育が義務化されることによって、インフラアクセスの改善が必要になるとともに、貨幣経済への参入が必然となります。今まで疾患することのなかった感染症や、文化的な制限によるストレスや、様々な問題が課せられることが予想できます。家事労働など子どもたちが担っていた分を、いきなり取り上げられたらたまったもんじゃない、と考えるかもしれません。

しかし、それでもなぜ、教育の必要性が叫ばれるのでしょうか?

賛否両論あるかとは思いますが…

今回は、なぜ彼らを「森の中に閉じ込められている=経済開発から取り残されている」とみなし「教育の必要性」を訴えるのかという理由について、「全ての人が初等教育を受けるべき理由3つ」と題して、私なりの答えを模索していこうと思います。

あくまで、この意見が正しい!と主張したいわけでなく、皆さんはどう思いますか?という視点で意見交換できたらと思います。

初等教育を受ける権利はすべての人間がもつ権利

日本国憲法には、憲法26条:〈教育を受ける権利というものがありまして、すべての日本人は初・中等教育を受ける権利をもつと憲法で定められています。全ての子を持つ保護者には、子どもに教育を受けさせることが義務として課せられているわけです。

これは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された、2016年から2030年までの国際目標:ミレニアム開発目標(MDGs)の、17の目標の一つ、「目標4:質の高い教育をみんなに」にもあるように、世界規模で当たり前に人間が享受されるべき権利であり、また初等教育への就学率100%の達成は、他の16のゴールの達成=すなわち、最も持続可能な開発に有効かつ効果的な手段であることを再認識し、早急に改善されるべき最重要課題であると言えます。

「質の高い教育をみんなに」というとちょっとざっくり聞こえるかもしれませんが、具体的には「2030年までにすべての子どもに初等教育を届ける」ということを、国連は人類共有の目標として掲げています。

現在の世界の初等教育の普及率

現在の初等教育の普及率について国連開発計画(UNDP)のこちらの記事が非常にわかりやすかったので下記に概要を抜粋します。

ざっくり言うと現在の初等教育への世界のアクセスは…

  • 開発途上地域の就学率は2015年に91%に
  • 全世界で学校に通えていない子どもの数はほぼ半減
  • サハラ以南アフリカの初等教育就学率は、1990年の52%から2012年には78%へ

しかし…

  • 最貧層世帯の子どもは、最富裕層世帯の子どもよりも学校に通っていない率が4倍高くなっている
  • 都市部と農村部の間にも、依然として大きな格差が残ってる

というような感じになっています。

※当記事で言う最貧層世帯とは、前回のブログ同様に、国際連合の定める、LDC:Least Developed Country・後開発途上国(シエラレオネを含む)の47か国を示すものとします(詳しくは外務省HPが見やすいです

下記に、すべての人が教育を受けるべき理由について、私が考えうる限りの3つを述べていきます。

1.教育が巡り巡って彼らの暮らしを守る

 

当ブログでは代表的な「開発途上国で起こってきた悲劇」について紹介したいと思います。

代表的な悲劇として、ここではアフリカ一のDGPを誇るナイジェリア共和国の石油を巡る政府と農村民の戦いを紹介していきます(今回はジャーナリスト白戸圭一氏の『ルポ資源大陸アフリカ』のエピソードを抜粋)

ナイジェリアのオロイビリという農村部で、1950年代にアフリカで最初の油田調査が行われました。

当時、遠くからきた客人を喜んでおもてなししたという村人たち。その後どんどん白人調査団が石油を採掘し、漏れ出した原油が土地に染み出してしまいます。農作物が育たなくなり、川の水を飲んだ村人が死亡するなどの悲劇が起きます。政府は住民の声にお構いなしに、金になる原油開発をどんどん推し進めていきます。村人たちが「何かがおかしいぞ」と思った頃には事態はすでに手遅れに。

ナイジェリアで最初の原油が発見されてから半世紀、ついに2004年には、政府と石油企業に武装組織「ニジェール・デルタ人民志願兵」が宣戦布告。その後も「ニジェール・デルタ解放運動」という組織が、石油関連企業の外国人労働者の誘拐や石油パイプラインの破壊など、国際的問題となった事件を巻き起こします。

こういった悲劇は、パプアニューギニアの先住民族の森林伐採だとか、ゴム・綿花・バナナのプランテーション農園でも全く同じことが起こってきたし、それこそ世界中のダム・空港・高速道路建設などのインフラ開発でも同じ悲劇が幾度となく繰り返されてきました。そしてそれらの森林・鉱物・天然資源は、日本をはじめとする先進国の経済発展の肥やしになってきました。

次世代の子どもたちには、武器ではなく、ペンを持たせたい。

住民たちは「自分たちの資源を自分たちで管理し自分たちの土地の利益とするべきである」と訴え、「教育を受けていれば政府に自分たちの権利を正しく主張できた」はずだとし、次世代の子どもたちへの教育に力を入れたいと、教育投資に対してとても積極的だ。ということがレポの一部に紹介されています。

これは自然災害や感染症などが起こったときも、初等教育の普及によって同様の対処ができるものと考えられます。

2.教育が悪しき文化の改善に役立つ

 

NGOが3,000年の歴史に10年で終止符を打つ

 

 

FGMという習慣をご存知でしょうか。ここではあえて、衝撃的な画像を掲載させていただきたいと思います。知らない人が、多すぎるので。

「FGM」の画像検索結果

End FGM EuropeanNetworkより

FGM(Female Genital Mutilation)とはアフリカ地域を多く含む、女性器切除の慣例のことで、成人のための大切な儀礼であるとされています。上記画像のように女性器の一部(クリトリス)を切除する場合や、女性器を全摘するパターン、入口を縫ってしまうパターンなど様々です。多くの場合、村の伝統的な女性たちが無資格のまま、消毒されていない剃刀などを用い、麻酔もなしに手術に及びます。

対象年齢は5歳程度~成人女性までと様々で、大人になるための通貨儀礼として重要だと信じられています。シエラレオネのFGMの実態について以前も当ブログで取り上げましたが、伊藤詩織さんが取材したレポートがとても参考になりました。(ジャーナリスト伊藤詩織さん「2018年シエラレオネ現地取材報告」をきいて。レイプ・女性器切除・乳児死亡…シエラレオネの女性たちは今。)

FGMは紛れもなく、大変な人権侵害であり、術後、傷口が化膿して重篤な病気になるリスクや、少女たちに心理的に深い傷も負わせてしまいます。

ユニセフのHPにFGMの実態をとても詳しく俯瞰できるデータがあったで下記に引用します。

  • 世界30カ国の少なくとも2億人の女の子たちや女性たちがFGMを経験している。
  • FGMを経験した2億人以上のうち、15歳未満の女の子は4,400万人。
  • 現在の傾向が続けば、2030年までに、さらに1億5,000万人の15〜19歳の女性がFGMを受けることになる見込み
  • FGMを経験している15〜19歳の女の子の割合が最も高い国々は、ソマリア(98%)、ギニア(97%)、ジプチ(93%)
  • FGMを受ける女の子は多くの場合、5歳の誕生日を迎える前に受けている。
  • FGMは、女性と子どもの権利の侵害である。
  • 2008年以降、20カ国の1万5,000以上のコミュニティで、FGMを廃止するという公式宣言が出された。2015年時点で5カ国(ケニア、ウガンダ、ギニアビサウ、ナイジェリア、ガンビア)がFGMを違法とする法案を可決している。
  • FGMに関する統計が存在する国でも、多くの人がFGMを廃止すべきと考えており、この慣習に対する非難が広まっている

このような悪しき伝統に抵抗できる術=女性たちが正しく声をあげ主張する権利は、紛れもなく初等教育によって培われると考えます。

ジャーナリスト伊藤詩織さん「2018年シエラレオネ現地取材報告」をきいて。レイプ・女性器切除・乳児死亡…シエラレオネの女性たちは今。」では、とあるFGMを受けた女性が、「自分の権利をどうやって主張すればいいかわからなかったことが悔しい」と述べています。(さらにFGMの手術費が本来初等教育にあてがわれるべき機会を奪っているとの主張もあります。)

現在では、より衛生・安全面で低リスクな切除方法を学ぶことが推奨されたりと、単に廃止すべきではなく、より伝統文化を尊重した考えも広まりつつありますが、当事者の声が世間にさらされるようになったのはほんの最近のことです。

NGOが3,000年の歴史に10年で終止符を打つ

声なきもの、一番弱い立場にある人の声を代弁する。これがNGOの最大の存在意義です。初等教育の普及は、その他に代表される、女性・児童・障碍者・低カースト層など社会で一番弱い立場の人々が抱える社会問題を、多様性で受け入れ、一緒に問題解決していく一歩となりえます。

3.教育が少子化を促す

 

乳児死亡率の低下と経済発展は反比例するが=少子化と経済発展も反比例する。

上記を(イコール=)だと思えない方がたまにいるらしい。

 

 

援助が人口爆発を招き経済発展に追いつかなくなり、地球の限りある資源が破滅しちゃうぞ論。

これは、極論であり、間違いです。



そんな人たちこそ、「貧しい人たちは暇だからセックスしかやることない」とかほんと馬鹿なこと言ったりします。

彼らが子だくさんになるのは…

  • 乳幼児死亡率(5歳までに子どもがなくなる確率)が高いから
  • 保険システムなど社会のセーフティーネットが構築されていないため、将来の家計の貯蓄
  • 将来の家事労働・自身の介護補助のため

などなどです。

なので、いきなりすべての子どもに教育を!といわれると、「子どもにまかせていた家事や仕事はどうするの!?」と構えがちですが、どんなに貧しく子だくさんな家庭であっても「現状優秀な子どもひとりには教育投資したい」と考えています。

初等教育の普及ならびに、他さまざまな支援によって、子どもの数を適切に減らしていくこと(家族計画)は、女性にとって人生で一番の危険な場面=出産時の妊産婦死亡のリスク軽減や、自分の子どもが5歳まで生きられずに何度も悲しい想いを経験することを防ぐことができます。

初等教育の普及は、適切な将来設計を促し、少子化に繋がるということです。

うまいデータがあったら、あとで紹介したい。(ちなみに妊産婦死亡率世界一位はシエラレオネ)

 

 

 

…あとこれは、超個人的見解なんですけど、少子化=人類の種の保存=人類共同体としての究極の生き残り戦略なんじゃないかと思っています。生物学的な?話しになるんですけど、以前こんな面白い記事をみつけました。

なぜ弱者を抹殺してはいけないのか? Yahoo!知恵袋の回答が秀逸すぎる

この記事の回答は、自然界は「弱肉強食」ではなく「適材適所」であるという考え方でした。(弱いうさぎはたくさんいるけど、強いトラは絶滅しそうになっている)

例えば障がい者の方や生活保護受給者を、淘汰させず守りながら多様性のある社会を創っていこうというのは、極論、太陽がなくなっても「目の見えない人が生き残る」=種の保存ができるという考えなのかなと私は理解。

これに基づいて考察していくと、個々の文化を守り保存しつつ、地球の限りある資源の中で人口爆発を起こさずに経済発展していけるようにする方法=すなわちこの最強の方法が→人類共通言語としての「教育」なのではないか。と考えたりしていた、現在妊娠9か月の妊婦である。笑 ちょっと無理すぎるかな。

結論:実際の現地の声

上記写真はNPO法人アラジが支援を続ける、シエラレオネ共和国のンボロコミュニティーのエルサンコという女性。子どもに「Yume」と、私の名前をつけてくれたそう(笑)

政府の支援を待ってられない!とエルサンコら両親が立ち上がって村人自らが建築した学校。「子どもたちには教育を受けさせたい!」でも、初等教育を平等に受ける権利はこの村へはまだまだ届かない。緊急支援が必要。

結論として、教育は、教育を必要としている人にとって、当たり前に享受されなければならない権利であるということを改めてここに述べたいと思います。

「「途上国で国際協力」なんて偉そうなこと言ってないで、現地の人と一緒に対等な立場で「ソーシャルビジネス」していくことが今理想だよね」と思っている人が多いかもしれませんが、今文字の読み書きができ、ある程度の計算ができ、外国人と対等に働ける人々は、確実に貧困線から一歩踏み出した、初等教育の恩恵を受けられた人たちです。

貧困ライン以下(2015年時点で、1日1.9$以下で暮らす人々)で暮らす人々が、なんらかの理由(内戦・自然災害等)で初等教育を享受できなかったと考えられる場合、彼らは現金収入へのアクセス(マイクロファイナンスなどの融資対象外)はおろか、基本的な衣食住もままならない状態です。こんな人たちがいまだに世界には10億人いるとされています。(ちなみに私が活動しているシエラレオネ共和国という国は国民の7割がそんな状態です)。

彼らには、まだまだ投資ではなく、追加援助が必要です。今までの初等教育の普及努力を無視して一概に『援助じゃアフリカは発展しない』とは言えないということ。

極論は人を不自由にさせるなと最近思う。(だからファクトフルネス読むのおすすめです)

個人的には、アフリカを身近に素敵に発信することには大賛成!そういったプラスの発信がもたらす経済効果ってすさまじいと思います。(測ったことないけど)

だけど、全体像としての事実を無視して、アフリカでなんか素敵なことしたいと、旅に出てアフリカを被写体にし、情報搾取だけして、現場の人々は「なんか心が豊かそうでした」って、今さらモヤっとして帰るひと多い。

 

結論:本読むの、おすすめです。

 

 

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下里 夢美
下里夢美(27歳)月間12万PV「下里夢美オフィシャルブログ」を執筆。NPO法人アラジ代表理事。「世界で一番命の短い国」シエラレオネで3つの貧困削減プロジェクトと日本人ゲストハウス「CHAMELEON」の運営に取り組む。現地法人Africa Lion.Ltd 代表取締役。「日本最大のアフリカに挑戦する女性のためのコミュニティ・アフリカ女子部」部長。2014年3月より活動をはじめ、2017年7月にNPO法人化。※インタビュー・講演のご依頼は「shimosato@alazi.org」にて!現在第1子となる息子君を妊娠中。2019年3月出産予定。
下里夢美

下里夢美(27歳)月間12万PV「下里夢美オフィシャルブログ」を執筆。NPO法人アラジ代表理事。「世界で一番命の短い国」シエラレオネで3つの貧困削減プロジェクトと日本人ゲストハウス「CHAMELEON」の運営に取り組む。現地法人Africa Lion.Ltd 代表取締役。「日本最大のアフリカに挑戦する女性のためのコミュニティ・アフリカ女子部」部長。2014年3月より活動をはじめ、2017年7月にNPO法人化。※インタビュー・講演のご依頼は「shimosato@alazi.org」にて!現在第1子となる息子君を妊娠中。2019年3月出産予定。